寿司職人 | 修行の思い出

今から12年前になるが、高校を卒業した私は、次の日から寿司の修行に東京に行きました。

修行に行く朝は、みぞれが降っていて、とても寒かった覚えがあります。また、不安と寂しさで自分の心も冷たかった記憶があります。
寒い中を父と母と私の3人で修行先の東京に電車で向かいました。
車内では、三人とも無口でなんとも言えない雰囲気でした。

東京駅に着き、修行先の親方にお会いし明日からよろしくお願いしますと挨拶をした後、父と母と最後の食事をしました。父は寂しさをじっとこらえて、食事中ずっと私を笑わそうと無理に会話を弾ませようとしていました。普段はそういう行動を起こすような父ではなく、すぐに父の思いが分かりました。ですから自分も楽しそうにその場を過ごしました。
その間も母はじっと黙ったまま、出てきた料理にも殆ど手をつけずに黙っていました。
食事が終わり、父と母が帰る時間になり福井に戻るため再度東京駅に戻り、福井方面行きの東海道新幹線の入場口の前でお別れをしました。

その時の記憶、私は生涯忘れる事はないです。

父は別れる前に「死に物狂いで頑張れ!」と激励してくれました。自分は何も返事をする事ができず、ただ首を縦に振るだけでした。そのとき、母は涙をこらえきれず、大粒の涙をふきながら一言言いました。「風邪引いたらあかんよ。温かくせんとあかんのやよ」と・・・

これが別れの言葉でした。
ただ一言だけでしたが、私の今までの31年の人生の中で最も心に残っている出来事であり、言葉でした。

あれから12年、夢を(越前カニを世界のブランドに!!)追わせてくれてありがとう・・・。
素直に両親に言えない自分がいますので、ここで書かせていただきます。

お父さん、お母さん。ありがとう・・・。


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